「直播」を直訳すると「生放送」の意味であるが、中国のEC領域では「ライブ販売」の意味となる。この「ライブ販売」は今の中国ECにおける商品販売においては欠かすことのできない施策であり、その仕組み、そして主流プラットフォームを理解することが大切である。今回は3大ライブ販売プラットフォームの紹介とその仕組みをご紹介する。
中国EC市場はver3.0に突入!?
中国のEC市場は日々進化しており、現在は「ver3.0」と言われています。
EC ver1.0 〜2015年
天猫(淘宝)と京東などのECサイト。
見込み顧客に対してサイト内のリスティング広告による誘客。EC内で完結。
EC ver2.0 2015年〜2019年
WeChat・Weibo・小紅書などの記事系SNS+ECサイト。
ECサイト内での競争激化により、EC外における顕在顧客とのコミュニケーションをメインとした記事コンテンツマーケティングが重視されるように。ファン化した顧客を天猫や京東などのEC旗艦店へ誘客。
EC ver3.0 2019年〜今
抖音、快手、淘宝直播などの動画SNS+記事系SNS +ECサイト。
ECサイト内の顧客獲得単価がこの数年間で約5倍に!また、多くのブランドが記事系SNSでのマーケティングを実施するようになった。そのため、潜在顧客への認知をメインとした動画系SNSでのライブ販売にて商品認知を行う動きが活発に。商品認知後、記事系SNSでのコミュニケーションを経て、EC旗艦店へ誘客(直接ECサイトへ経由するパターンもある)。
このように現在の中国EC市場では競争激化によりEC内外での連動施策を実施することが不可欠となっています。
では、ver3.0の主流な手法であるライブ販売とは、どういうものか?
市場規模は5.7兆円!非常に魅力的に映る中国ライブ販売だが・・・
日本においても中国のライブ販売は、多くのWebメディアに取り上げら、その市場規模の大きさに加えて、
「1時間で500万円の売上達成!」
「1日で5000個が即完売!」
といった輝かしい販売成功例とともに紹介されるWeb記事が散見されます。もちろん、これらの情報が嘘というわけではございません。
ただし、それはトップKOLが何回ものライブ販売を行い、1回のライブで数十アイテムを紹介した上で唯一売れた「1アイテム」の事例に過ぎません。
また、運良く商品がそれなりに売れたとしても一過性のことであり、その後に定期的に販売していくために売り場(販売チャネル)を確保する必要があります。
※多くは、KOLによるライブ販売後のアフターフォローを行っておらず、一過性のプロモーションで終わってしまい、その後の通常EC販売に結びついていないケースが多く見受けられます。
そのため、マーケティング担当者は、中国向けのライブ配信を行う際には、
POINT1:ライブ販売は商品認知と話題作り
POINT2:ライブ販売後の話題を活用した定期販売ができる商品チャネル確保
上記の2つのポイントを考慮しながらライブ販売の実施を検討することが大切となります。
中国で主流の3大ライブ販売プラットフォームとは?
では、中国にてライブ販売を行うにあたって、抑えておくべきプラットフォームはどれか?
現在、中国には多数のライブ配信機能をもったプラットフォームが存在しますが、必須と言えるのは、淘宝直播、抖音、快手の3つです。
1:淘宝直播(Taobao zhibo)
Alibaba(アリババ)が運営するECプラットフォーム「淘宝」のライブ販売機能。現在は、独立したAPPがあります。京東や拼多多といったECプラットフォームでも同様にライブ販売機能があるものの、配信者数、ユーザー数、取引金額、取扱商品数のどれをみても淘宝直播が圧倒的です。
一般的には、KOLは1回の配信にて、30アイテム程度の商品を紹介。1アイテムの紹介時間は10-30分程度。各商品は、ライブ配信画面にて一覧表示されてあり、リンク下の商品ページ(※)にて直接購入が可能。知名度の高いKOLの紹介をしてもらった商品は、「〇〇推荐」といった、KOLのオススメという文言を商品名に付け加え、ライブ中の新規ユーザー訪問によるEC内のSEO最適化を図ることもできます。また、ライブ放送終了後も放送内容を過去履歴より再生できるため、終了後の販売売上を見込むこともできます。
※リンク商品ページは、ブランド旗艦店、KOL自身の店舗、代理店舗など、異なる店舗が混在しています。どの店舗にするかは、KOLと店舗とのご相談により決定いたします。
2:抖音(Douyin)
Bytedance(バイトダンス)が運営する動画系SNSプラットフォーム「抖音」の中にあるライブ販売機能。ライブ配信の仕様は淘宝直播とほぼ同様であるが、大きく異なる点として、
・商品リンクは抖音内or他のECPFリンクを設置する。
・ストリミーング再生のため、ライブ放送終了後に閲覧ができない。
この2点が挙げられます。
ユーザー数が淘宝直播に比べて非常に多く、また動画配信機能によりユーザーへの事前告知がしやすいため、多くの顕在顧客への接触機会を獲得することができます。一方で、娯楽性が高く、購入意向は淘宝直播に比べて低いユーザーが多いのも事実です。そのため、定期的に抖音内での動画広告やKOLプロモーション(動画コンテンツで商品紹介(商品リンク含む))を行っているなどのコミュニケーションを重ねている商品にて実施する場合に、効果が発揮されると言えます。
3:快手(Kuaishou)
Kuaishou(北京快手科技)が運営する動画系SNSプラットフォーム「快手」の中にあるライブ販売機能。ライブ配信の仕様・特徴ともに抖音と同様である。唯一、異なるのが抖音に比べて、内陸や地方の3級都市に多くのユーザーが点在しております。そのため、単価が低い製品が好まれる傾向があります。
ライブ販売実施の具体的な実施の流れと費用は?
では、実際にライブ配信をどのように準備し、どれくらいの費用がかかるのかについてご説明します。
STEP1:商品と予算
KOLはランクと実施時期(例えば、W11の前と後)で費用が大きく異なり、また一概にKOLと言っても、それぞれに得意なジャンルがあるため、まずは商品と予算を決める必要ございます。
STEP2:配信プラットフォーム・KOL・配信時期
商品と予算をもとに、最適な媒体とKOL候補を提出します。通常、KOLは複数商品の紹介をまとめて行うため配信時期についてはKOL側にて決定されるケースが多く、配信時間帯のみ交渉を行います。また費用については、通常KOL起用時には、①キャスティング費用②販売手数料(PF手数料含)の二つの費用が発生します。前者は固定ですが、後者は売上数に応じて変動します。こちらについても商品と予算をもとに調整を行います。
※KOLへの費用支払いは、KOLにより異なりますが、①は契約時、②は配信終了後が一般的です。
STEP3:商品サンプル送付・原稿作成・商品リンク提供・事前告知
KOL決定後、実際にライブ配信時にお話しいただく原稿作成(中国語)を行います。また、KOLが紹介する商品リンクの提供を行います。準備完了後にKOLアカウントにてライブ配信の事前告知を行います。
※天猫or淘宝にて商品リンクがある前提です。無い場合も商品ページ用意は可能です。
STEP4:配信・報告
配信終了後、販売数・売上額・他データ(KOLにより提供するデータに差があります。)をもとに報告書作成。
以上となります。
中国において、EC販売を行うにあたって、ライブ販売は欠かすことができない手法の一つです。ただし、先述したように、「コレだけやれば成功する」というモノではございません。重要なことは、実施後にライブ販売で得た商品認知と話題性を如何にして活用し、中長期的な販売に結びつけるか、です。